市場の価格変動は本質的にカオス的であり、微小な誤差が大きな影響を与えるため、完全な安定はありえない。また、市場の価格変動は正規分布ではなく、裾野が広い分布に従うべきである。そして、短期的な予測はある程度可能だが、長期的には不確実性が高まり、予測の信頼性が低下する。
市場の価格変動は本質的にカオス的であり、ディーラーの売値と買値の差が増幅され、取引の不確実性を高める。このような市場のカオス性は、特に投機目的の取引において顕著であり、予測困難な変動を引き起こす 市場価格が安定しないのは、ディーラーの売値と買値のほんの僅かな価格の差が、取引の有無を分け、取引ごとに誤差を増幅するカオスのしくみが内在されているからです。特に投機目的で売り手の立場と買い手の立場を自由に入れ替わるようなディーラーが大部分を占めている限り、カオスの効果によって市場価格に予測困難な変動が起こることは避けられないことなのです。その結果、
市場のフラクタル性とカオス的な性質は密接に関連しており、価格変動の不確実性とランダム性が確率的な振る舞いを引き起こす。これにより、市場の動きが予測困難であり、長期的なトレンドもフラクタルパターンを示すようになる 市場価格がフラクタル性を有することも、実は、このカオスの問題と密接に関連しています。フラクタル性は、市場価格の上下変動が確率的なものとしてみなせることによって説明できます。ということは、カオスによって市場価格の変動が予測困難になり、確率的な振る舞いが生じるのであれば、その結果として、市場価格の変動がフラクタル性を示すようになるというわけなのです。
ニュースが市場に与える影響は一時的なものに過ぎず、実際には市場の自発的なゆらぎやカオス的な動きがより大きな影響を及ぼす ニュースで市場が動く事例はあるのですが、自発的な市場のゆらぎのほうが通常ずっと大きく重要だということです。
市場の小さな変動はランダムウォークに近いが、実際の市場の大きな変動は、予測不能なブラックスワンやカオス的な動きによって引き起こされる
べき分布に従う現象とフラクタル性は密接に関連しており、特に大きな破片の存在が全体の特性を決定づける重要な要素である 一般に、 中略 破片の分布のもうひとつのおもしろい性質は、大きな破片だけを寄せ集めただけで、だいたい元の原形が推定できることです。中ぐらいの破片は、大きな破片の隙間を埋め、小さな破片はさらに残った隙間を埋めるように配置されているのです。このように、べき分布にしたがう現象を語る時に最も重要な意味を持つのは、数としてはごくわずかなのですが、大きな破片です。
為替ディーラーの行動が取引間隔のゆらぎに影響を与えることは、まさに人間の心理と市場の相互作用を示している T=3、すなわち、3分間くらいのスケールで移動平均をとると、取引間隔のゆらぎが指数分布にしたがうことが確認できました。これが意味することは、
インフレやバブルの進行中に価格変動をある程度予測することは可能ですが、これらの現象がいつ終わるかを正確に予測することは非常に難しい インフレが発生している状況では、物価の上昇率、あるいは、通貨価値の下落率は、かなり先まで予測することが可能です。いわゆるバブルは、特定の商品に関してインフレと同じように価格が上昇する現象ですが、この場合にも価格を予想することは可能です。ただし、インフレやバブルがいつ終わるか、ということを予測することは簡単ではありません。
大きな地震が発生する前には、地殻に非常に大きな歪みのエネルギーが蓄積されており、そのエネルギーが解放される時には予兆が見られることが多い。これもまた、予測不能なブラックスワンの一例であり、大きな影響を及ぼす出来事は突如として起こる 大きな地震が発生するためには、地殻に非常に大きな歪のエネルギーが蓄積されていることが必要であり、また、
短期間の市場価格の動きはランダムウォークのように見えるが、ある程度の時間同じ方向に動き続けると、その動きがトレンドとして形成される可能性が高い 1分以内ではトレンドが発生したように見えても市場価格は直前の価格に引き戻される可能性が強いが、もしも、およそ1分間以上同じ方向に円ドルレートが動いたならば、トレンドが発生し、その方向にさらにレートが動きやすくなるということです。
アトラクターを利用した予測方法は、あらかじめパターンを用意するのではなく、データから自動的にパターンを生成することであり、不確実性と複雑性に対処するための有効な手段である アトラクターを利用した予測の方法は、あらかじめパターンを用意しておくのではなく、データから自動的にパターンを作り出していく方法である、と言うこともできます。
市場のボラティリティは突発的に増加し、そのゆらぎが長期間にわたって持続することがある。この現象は、相関関係や基本的な統計量を観測することである程度予測が可能であるが、完全な予測は不可能であり、不確実性とリスクの管理が重要である 市場が穏やかだった時、突然大きな変動が何らかの原因で発生し、その乱高下が持続する、ということがしばしば観測されます。一度大きくなったゆらぎの幅は、非常にゆっくりと減衰していくことが確認されています。大きなゆらぎの持続時間は、長い場合には、1ヵ月を超えるような場合もあります。ボラティリティのこのような性質は、相関関係などの基本的な統計量を観測するだけである程度の予測が可能です。
均質でない物質の歪み分布と破壊のプロセスは、複雑なシステムの自己組織化を示しており、フラクタル性と臨界現象が重要な役割を果たす 均質でない物質に歪を加えても全体に一様に歪が分布するわけではなく、材質中の弱い場所に集中する性質があります。したがって、まずそこで破壊が起こります。するとその部分の歪は解放され、周囲のまだ破壊が起こっていない場所に分散されます。 中略 時には、ぎりぎりまで歪みが貯まった大きな領域で一度に大きな破壊を起こすこともあります。その結果、相転移のちょうど境目の状態が持続することになり、破壊のエネルギーの分布がフラクタル性を示すようになあるわけです。このように、システム自体の性質として、ちょうど臨界的な状態を保つしくみを内在した現状が自己組織臨界現象なのです。
電気回路のノイズは電子のランダムな運動に起因し、このランダム性は市場や経済などの複雑なシステムにおける不確実性と同様に、予測困難な要素を生み出す 電気回路のノイズは、電気回路を構成する電子が熱でランダムにフラフラと動いていることに原因があります。例えば、電圧がかかっていなくて、平均的には電流が流れていないような状態でも、ひとつひとつの電子がランダムに運動しているため、ミクロに見れば、微弱な電流が右に流れたり左に流れたりしているわけです。
インフレとデフレは本質的に異なる現象であり、特にインフレは集団心理と密接に関連し、ハイパーインフレのような極端な状況も発生し得る インフレは集団心理で発生・成長し、物価上昇率が短期間に1億倍にもなるハイパーインフレも起こりうるのに対し、デフレの価格下落に関してはそれに対応するようなことがないので、両者は全く異なる現象とみなすべきです。
市場価格の変動が臨界点を外れることで、需要の超過が続きインフレが発生し、その結果として大きなスケールでのゆらぎが相対的に小さく見える。しかし、市場が臨界状態を維持する場合は、フラクタル性が観察され、大きなスケールでも小さなスケールでも類似した変動が見られる 大きなスケールにするとゆらぎが相対的にどんどん小さくなるのは、市場価格の変動が臨界点から外れて需要が常に超過したようなインフレ状態にあるからに他ありません。 もしも、市場が臨界状態を維持していれば、市場価格はフラクタル性を示すので、円ドル市場価格で確認したように大きなスケールでも小さなスケールでも、同じような変動に見えることになるわけです。
個々の企業の所得は大きく変動する一方で、全体としての企業分布は安定している現象は、リスクの分散と集団的な安定性の結果である 所得は一社一社でかなり激しく変動しているのですが、企業全体の分布を見ると非常に安定している
未来の予測不可能性を前提とする場合、唯一の正解に固執せず、多くの代案と選択肢を持つことが最も重要である。また、人類全体として価値観の多様性を豊かに保つことで、未来への適応力が高まる 予測不可能なことが未来に起こるということを前提とすると、最も大切なことは、
べき分布に基づく現象では、無限回のサンプルでは期待値が無限大になりますが、有限回のサンプルでは不均衡な結果が出やすく、運が良ければ大きな利益を得ることができる。このため、研究開発においては多くの試みを行うことが理にかなっている べき分布は、サンプル数を無限大とするような数学的な平均を考えると、期待値は無限大になります。しかし、有限回のサンプルで評価すると、小さなものだけしか得られないで損をすることが多いのですが、運がいいと莫大な利益を得ることができます。 中略 サンプル数を増やせば増やすほど大きなものを当てる可能性が高まりますから、基本的に研究開発はできるだけ沢山したほうがいいということです。 中略 無駄を減らすには、 同じお金をかけるなら、リスクのある高額の研究を少数だけ実施するよりも、お金のかからない研究を広くやったほうが、一般的には大きな果実をつかめるチャンスは増加します。
失敗例から学ぶことは非常に重要であり、同じ過ちを繰り返さないための最善の方法である。また、多くの失敗例を検討することで、新たな洞察や独創的なアイデアを見つけることができる