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怒りについて 他2篇(岩波文庫)

怒りについて 他2篇(岩波文庫)Kindle版

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  • 怒りについて 他2篇(岩波文庫)Kindle版

長い地道な訓練の結果、あらゆる攻撃に耐え抜いて敵を疲れさせる、頑強な身体を獲得した者たちである。

神聖な競技会でも、勝利を収めているのは、たいてい、連打を浴びせる手をじっと耐え通すことで相手を疲れさせるというやり方だ。賢者もこういった種類の人間の仲間だと考えたまえ。長い地道な訓練の結果、あらゆる攻撃に耐え抜いて敵を疲れさせる、頑強な身体を獲得した者たちである。

怒りについて 他2篇(岩波文庫)P63

理性が退くと、心はかくも弱体化する。

理性が退くと、心はかくも弱体化する。

怒りについて 他2篇(岩波文庫)P77

怒りとは、不正に対して復讐することへの欲望である。

「怒りとは、不正に対して復讐することへの欲望である。または、ポセイドーニオスが言うように、自分が不正に害されたとみなす相手を罰することへの欲望である。ある人々は、次のように定義した。すなわち、怒りとは、害を加えたか、害を加えようと欲した者を害することへの心の激動である」。

怒りについて 他2篇(岩波文庫)P91

心はひとたびわが身を怒りや恋や、その他の情念に投げ出したならば、もはや衝動を抑えることはかなわない。

心はひとたびわが身を怒りや恋や、その他の情念に投げ出したならば、もはや衝動を抑えることはかなわない。必ずや、それ自身の重みと、転落に流れる悪徳の本性が心を捉え、底の底まで道連れにする。

怒りについて 他2篇(岩波文庫)P101

怒りに対する最良の対処法は、遅延である。

怒りに対する最良の対処法は、遅延である。怒りに最初にこのことを、許すためではなく判断するために求めたまえ。怒りには、はじめは激しい突進がある。待っているうちに熄むだろう。全部取り去ろうとしてはならない。一部ずつ摘み取っていけば、怒り全体を征服できるだろう。

怒りについて 他2篇(岩波文庫)P174

予想と期待に反して起きたことが、いちばんひどく心を揺さぶる。

人が何かを不凍と判断するのは、こうむるに値しなかったという理由からか、予想していなかったからである。思ってもみなかったことを、われわれはそれに値することとはみなさない。だから、予想と期待に反して起きたことが、いちばんひどく心を揺さぶる。

怒りについて 他2篇(岩波文庫)P177

われわれを怒りっぽくしているのは、無知か傲慢である。

人は言う。「それなら、どうして敵の不正はわれわれを動揺させるのか」。予期していなかったか、明らかにこれほどとは思わなかったからだ。これをもたらすのは、われわれ自身の自惚れである。われわれは、自分が敵からすら害されてはならないと思っている。誰もが自分の中に王の心を宿している。専横が自分に与えられるのを欲し、自分がこうなるのは欲しない。だから、われわれを怒りっぽくしているのは、無知か傲慢である。

怒りについて 他2篇(岩波文庫)P177

あらゆる事態を思い、予期しておきたまえ。

あらゆる事態を思い、予期しておきたまえ。善き性格にすら、何か残酷なものが現れるだろう。
人間本性が狡猾な心を、忘恩の心を、貪婪の心を、不敬な心を生む。誰か一人の性格を判定するとき、人間一般の性格について思いたまえ。最も喜んでいるとき、最も心配したまえ。あなたにいっさいが平静に思える時ですら、害になるものは存在しないわけではない。休らっているにすぎない。あなたを傷つけるものはいつも存在するのだと思いたまえ。舵手は決して安心しきって帆を広げきったりはしない。迅速に引っ張れるよう索具を調えておく。

怒りについて 他2篇(岩波文庫)P178

怒りのあらゆる過ちを繰り返しわれわれの目の前に引き出して、きちんと評価すれば、われわれは怒りに陥らないことを実現できるだろう。

怒りのあらゆる過ちを繰り返しわれわれの目の前に引き出して、きちんと評価すれば、われわれは怒りに陥らないことを実現できるだろう。

怒りについて 他2篇(岩波文庫)P199

多くのことを、また実力を越える難事を追求して疲労に陥らないよう気をつけなければならない。

運命は、誰であれ多くを手がけている者に、どこでも応じてやれるほど甘くない。その結果、予定していたのと反対のことが起こると、彼は人間にも仕事にも我慢ができず、ごく些細な原因で、時には人に、時には仕事に、時には地位に、時には運命に、時には自分自身に対して怒りを発することになる。だから、心が平穏であるためには翻弄されてはならず、今述べたように、多くのことを、また実力を越える難事を追求して疲労に陥らないよう気をつけなければならない。

怒りについて 他2篇(岩波文庫)P203

あなたの中でどこが弱いのか、そこを最もしっかり守るために知っておかねばならない。

自分の病気を知ること、その影響が広がる前に抑えることは有益である。何がわれわれを最も駆り立てるのか、見るようにしよう。ある者は言葉による侮辱で、ある者は行為による侮辱で感情を害する。この人は家柄にあの人は容貌に配慮を求める。この人は最高の趣味人と、あの人は最高の知識人とみなされたい。この者は傲慢に、この者は強情に我慢できない。あの男は奴隷を怒るに値しないとみなす。この男は家では横暴だが、外では大人しい。あちらは懇願されるのを不正と、こちらは懇願されないのを侮辱とみなす。誰もが同じ場所を打たれて傷つくわけではない。だから、あなたの中でどこが弱いのか、そこを最もしっかり守るために知っておかねばならない。

怒りについて 他2篇(岩波文庫)P210

多くの不正は、われわれを通り過ぎるに任せよう。

すべてを目にし、すべてを耳にするのは当を得たことではない。多くの不正は、われわれを通り過ぎるに任せよう。

怒りについて 他2篇(岩波文庫)P210

一日すべて細かに調べ上げるこの習慣にまさる、どんなものが他にありえようか。

一日が終わり、夜の眠りへ退くとき、己の心に向かって尋ねたものである。「今日、お前は己のどんな悪を癒したか。どんな過ちに抗ったか。どの点でお前はよりよくなっているのか」。怒りも、毎日審判人の前に出頭しなければならないと分かれば、収まって穏やかになるだろう。だから、一日すべて細かに調べ上げるこの習慣にまさる、どんなものが他にありえようか。自己の省察のあとにやって来るあの眠りは、どのようなものだろう。心が賞賛か忠告を受けたのちには、自己の偵察者と秘密の監察官が己のふるまいを見定めたのちには、何と静かで、何と深くて自由な眠りが訪れたことだろう。

怒りについて 他2篇(岩波文庫)P253

覚悟の上で事に取りかかる心は頑丈である。

君は自分が多くのことを耐え忍ばなければならないと覚悟しておくことだ。冬に凍えるのを、海上で船酔いするのを、車上で揺すぶられるのを、誰が不思議に思うのだろう。覚悟の上で事に取りかかる心は頑丈である。

怒りについて 他2篇(岩波文庫)P255

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