MENU

ウォール街の物理学者(Kindle版)

ウォール街の物理学者(Kindle版)

第1章 パリの孤独な天才

ランダムウォークの回数をもっと増やした場合、曲線の高さは低くなり、裾の幅が広くなる。これはつまり、長い時間が経てば、最初の価格から大きく変わる可能性も高くなるということだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P43

期間が長くなればなるほど、曲線の高さは低くなり、左右の幅が広がってくる。つまり時間が経つごとに、元の価格から大きく離れる確率が増すということだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P45

ランダムだからこそ予測可能なこともある。バシュリエの確率論的なモデルが機能するのは、相場の動きがランダムになっているおかげだ。ランダムだからこそ、大数の法則――ベルヌーイが発見した、試行回数が増えるほど結果がその確率に近づく法則――がはたらき、長期的な相場の動きが予測しやすくなる。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P55

第2章 鮭の泳ぎと株価のゆらぎ

もう二度と、やるべきことを人にたずねたりしない。自分でやりたいことを決めて、それをやるだけだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P62

心理学などの知見をとりいれることで、金融モデルの前提はより現実に近いものになるし、そこから現在のモデルの欠点も見えやすくなるからだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P81

市場にも、長さのちがうゆらぎが存在している。たとえば取引の詳細やトレーダーのやりとりといった要素は、その日の株価の動きに影響する。これは鮭が短い区間を泳ぐときと同じ、速いゆらぎだ。でもそれ以外に、景気の変動や政策金利といった要素も、やはり市場に影響している。短い時間軸では見えないけれど、すこし遠くから眺めるとその効果が明らかになるような、遅いゆらぎだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P88

それぞれの瞬間を見た場合、それまでと同じ方向に進むよりも、反対側に動くことのほうが多いということだ。さらに株価が同じ方向に二度つづけて動いた場合は、一度だけのときにくらべて、もう一度同じ方向に動くケースが多くなることもわかった。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P91

まずデータを調だ最初のステップにすぎないことをたててシレブルなモデルをつくってみる。でもこれはまて、シンプルな前提が崩れるケースをみつけだす。そしてデータを詳しく分析しながら、前提の欠陥がモデルの予測精度にどのような影響を与えるのかを探っていくのだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P92

いったんモデルをつくったら、次のステップはその前提が崩れるケースをみつけだし、それがどれほど深刻な影響になるかを突き止めることだ。前提がつねにまちがっていたり、特定の状況でかならず外れたりするなら、なぜそうなるのかを考えてみる

ウォール街の物理学者(Kindle版)P92

モデル構築プロセスは、その時点で最高だと思えるモデルや理論をつくり、それを新たなデータに照らしあわせて改善していくプロセスの連続だ。すこしずつ理解を深めながら、よりよいモデルを追究しつづける。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P93

第3章 海岸線の長さはどれくらい?

マンデルブロの父親はこの動きがひどくまちがっていることに気づいた。集団になって大きな道路を歩くのは、敵に発見してくれと言っているようなものだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P110

あるものごとが正規分布になっていて、十分な数のサンプルがあるとき、サンブル内の平均値は一定のところに落ちついてくる。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P112

あるものごとが一定の確率分布になっている場合、十分にたくさんのサンプルを集めれば、新たにいくつかのサンプルを加えても平均値にあまり影響しない。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P112

左右の広がりがぶあついので、試行を何千回くりかえしても、やはり銃弾の平均値は予測できないのだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P115

分布のランダムさは、アルファという数によって表すことができる。アルファとは、レヴィ安定分布の裾の太さを示す数字だ(図4に例を示す)。正規分布のアルファ値は二になり、コージー分布のアルファ値は一になる。アルファの値が小さければ小さいほど、その分布のランダムさは激しくなる(つまり裾が太くなる)。アルファが一以下の分布は大数の法則にたがわないし、平均値をだすこともできない。アルファが一より大きく二より小さい場合、平均値はあるけれど、値のばらつき(分散)が一定にならない。つまり平均値は存在するけれど、実際のデータからその平均値を割りだすのがきわめて難しいということだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P127

研究者たちはなるべくシンプルな仮説からはじめようとする。そのシンプルな仮説を行けるところまで進めてみて、それからどこがまちがっているのかを振り返るのだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P131

第4章 ディーラーをやっつけろ!

実際にどれくらい有利かを計算するには、払い戻しの倍率(オッズがb対一の場合のbの数字)に、本当の勝率(部分的な情報をもとにしたもの)を掛けて、そこから本当の敗率(これも部分的な情報をもとにしたもの)を引いてやればいい。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P166

さらにケリーの論文でいちばんおもしろいのは、情報がすこしずつ届く場合に何が起こるかということだ。細切れの情報がくるたびにケリー基準にしたがって賭けていると、その時点で入ってきている情報の割合と正確に同じペースで、手持ちのお金が増えてくる。情報がそのままお金になるのだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P166

カードカウンティングは、カードの山についての情報を知るプロセスだ。一枚配られるごとに、その中身がどう変わったかを追っていく。それをもとに自分の有利さを計算すれば、ケリー基準で賭けるべき金額が算出できる。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P167

第5章 物理学がウォール街にやってきた

マンデルブロはずっと、例外的なできごとは意外に多く起こるのだと主張してきた。市場のリターンはファットテールになっていて、正規分布よりも激しくランダムだからだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P218

モデルの正確さは前提の正確さを超えることはない。場合によっては、すばらしくよくできた前提が、世の中の変化によって使い物にならなくなることもある。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P222

ただし、失敗と修正をくりかえして改善をつづけるという科学的プロセスは、人類が過去三〇〇年にわたって発展させてきた貴重なノウハウだ。いまのところ、これを超えるやり方はない。いつも完璧でないからといって、それを捨ててしまうのはもったいない。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P223

第6章 サンタフェ街道の予想屋たち

モデルのなかに現れる特定のパターンを実際の気象データと照合すれば、その次にどう動くかを予測できるかもしれない。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P238

初期条件にほんのわずかな差があると、そのちがいは爆発的に広がり、まったく異なる結果を生んだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P240

初期条件のわずかなちがいが、その後のできごとに巨大な影響をおよぼすということだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P240

つまり気象の動きは与えられた条件によって正確に決まるけれど、すべての蝶を観察できないせいで、ランダムであるかのように見えるということだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P241

アトラクタは、物体の通る道すじを引きつける。ルーレットで言えば、アトラクタにあたるのは球の落ちるポケットだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P248

カオス的なシステムのアトラクタが、高度に複雑なフラクタル構造になるというものだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P248

アトラクタはカオス系のふるまいを理解するためのもっとも重要な要素なので、それさえわかれば予測への道も開かれることになる。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P249

一見ばらばらに動いている小さなプロセスが、全体としてシンプルな構造を生みだすというものだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P250

カオス理論を学んだおかげで、一件ランダムな見かけの下に、予測を可能にする規則的なバターンがひそんでいる可能性を知ることができた。予測可能なパターンをあぶりだすための統計手法の使い方もマスターしたし、市場のモデルに照らしてデータを検証するスキルも身につけた。使っているモデルが機能しなくなったことを検出する方法も学んだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P256

彼らがやっていたのは市場の本質を追究することではなく、単に大きなノイズのなかから小さな情報を抽出することだったからだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P256

でも遺伝的アルゴリズムは、最適なやり方が何なのかを直接考えない。可能性がありそうなものを全部つっこんで、それぞれの条件同士を競わせる。生物の生存競争と同じだ。いくつかの答えが勝ち残ったら、今度はそれをバラバラにして新たな形に組みあわせ、二世代目同士でまた競争させる。そうやって最後まで生き残ったのが、もっともすぐれた条件ということになる。適者生存の原理だ。実際にいろいろな条件をためしてみて、いちばんうまくいったものを勝者として採用すればいい。遺伝的アルゴリズムは複雑な物理学の問題についても、非常にすばやく最適解に近いものをみつけだしてくれる。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P258

成功が知られれば、真似をする人間たちがでてくる。そして同じ戦略をとる人間が増えれば、それぞれの取り分はどんどん減っていくからだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P264

モデルに明確な理論的支えがあることは、諸刃の剣だと言える。一方では、明確な理論はモデルの限界を理解するための大きな助けになる。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P266

効率的市場仮説を全面的に受け入れたとしても、やはり予測可能なパターンを利用して儲けることは可能だということだ。必要なのは、誰よりも目ざとく市場のパターンをみつけだし、誰よりも巧みにそれを投資戦略に落とし込むことだ。
プレディクション・カンパニーは、なるべく多くのバターンを誰よりもすばやくみつけることによって、市場を出し抜くことに成功したのだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P269

第7章 ドラゴン・キングの足音

大きなできごとが起こる前にはかならず、同じ特徴的なパターンが現れていた。グラフは波打ち、しだいに波の間隔が縮まってくる。揺れはどんどん細かくなり、その先の一点に集まろうとしている。臨界点だ。
波の形を分析すれば、臨界点に到達するタイミングを予測することもできた。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P274

複雑系に特有のパターンをみつけだし、そのパターンをもとに決定的な瞬間―破裂や地震、株価の暴落を予測することだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P279

つまり大規模なストライキを予測しようと思うなら、労働者の不平不満に目を向けていても意味がない。そんなものはどこにでもある。目を向けるべきなのは、労働組合だ。自己組織化の徴候こそが、ストライキ発生の鍵になる。臨界現象を引き起こすのは、針のひと突きではなく、全体の連携なのだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P284

あらゆる部分で臨界現象の準備が整っている場合、大きな割れ目の前身である小さなひびの増幅する様子にも影響がでてくる。決定的な破裂が起こる前には、それよりも小さなできごとの起こる頻度が特定のパターンを描きながら増えてくるのだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P287

このパターンは対数周期と呼ばれ、時間の対数になるような形で、小さなできごとの起こる間隔がどんどん短くなってくる。こういうパターンは、破壊が起こりうる状態のときしか見られない。つまり臨界現象の前ぶれになっているということだ。対数周期のパターンでは時間経過とともに間隔が短くなってくるので、小さなできごとの起こる間隔を調べれば対数周期的かどうかはすぐにわかる。さらに、グラフの頂点が集中していく先を見れば、どの時点で臨界現象が起こるかも予測できるはずだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P288

ソネット夫妻の予測手法は、全体が負荷に耐えきれなくなって起こるような、致命的に大きな地震の予測にしか適用できない。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P289

一〇月二七日の暴落でひときわ目立った特徴は、ニューヨークの市場が翌日にはすぐに反発したことだった。
暴落の直後にすばやく回復したこと自体が、市場の効率性という考え方を否定しているからだ。株価の動きがつねに企業の実際の価値を反映していると考えた場合、暴落は企業の実際の価値が大きく下がったことを意味することになる。
市場の抱える不安定さが暴落を引き起こしたと考えるほうがしっくりくる。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P291

暴落するかどうかは、市場の状態にかかっている。市場が安定していれば、暴落ではなくわずかな下げ幅で終わったかもしれない。そして物質の破壊や地震と同じで、たとえ悪いニュースが予測できなくても、市場が不安定な状態にあるかどうかを知ることはできる。対数周期的なパターンを探せばいいのだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P292

群集心理の解明はできなくても、群集心理が一線を越えた状況を検知することはできる。それができれば、投機バブルがふくらんでいるかどうかを知ることができるし、ある時期(臨界点)までにバブルがはじける確率を予測することも可能だ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P296

金融は女王だ、とソネットは言う。金融を世界政治のどこに位置づけるかは自由だが、金融市場とそれを動かす人びとが社会的に大きな力をもっていることは事実だ。その事実だけでも、金融のしくみを研究するのに十分な理由になる、とソネットは考える

ウォール街の物理学者(Kindle版)P297

仮に細部がまちがっていたとしても、株価のファットテール分布を発見した功績は大きい。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P300

彼らは極端に大きなできごとも、本質的には小さなできごとと変わらないことを示した。そこから彼らが導きだした結論は、大惨事を予測しようとしても無駄だということだった。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P300

多くの大地震は、小さな地震と本質的に変わらない。そういう種類の地震は、ソネットの手法でも予測できない。でもドラゴン・キング的な特大の地震は、ちょっと性質がちがう。臨界現象と同じく、すべてのピースがきちんとそろったときにしか起こらない現象だ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P302

ブラック・スワンのように見えるできごとのなかには、足音を立てながら近づいてくるものがたくさんある。その足音は多くの場合、対数周期パターンという形をとっている。破滅的なできごとの接近を示す特別なデータの振動だ。全体が自己組織化されて、正のフィードバックと増幅のプロセスが整っているときにだけ、対数周期バターンは現れる。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P302

古くなったパターンは、すぐに捨ててしまえばいい。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P303

世の中を揺るがす事態に共通する規則性を探し、それを予測に利用しようというのだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P303

市場は激しくランダムで、例外的なできごとがたくさん起こる。それでもデータの見方さえ知っていれば、例外を予測することは不可能ではない。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P304

エピローグ 経済の未来を救うために

モデルを有効に使うためには、しっかりとした常識をもち、そのモデルの限界を把握しておくことが必要だ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P345

新たなモデルが登場し、そのモデルが機能しない状況が明らかにされ、それを踏み台にしてより強固なモデルが構築されていくのだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P345

まず問題をわかりやすくするために、シンプルな前提を立ててみる。その条件でうまく問題が解決しそうなら、今度は最初に立ち戻って前提条件を疑ってみる。もしも前提条件が現実にそぐわなければ、解決策を考え直さなければいけない。うまくいけば、ちょっとした調整だけで使えるようになるかもしれない。あるいは、特定の条件ではとてもうまく機能するけれど、別の条件では新たな対応を考える必要があるかもしれない。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P349

いくつかの状況でうまく機能する公式をみつけて、それがどんなときに利用できるかを明らかにすることだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P350

中庸派にとってのランダムさは、正規分布で表される程度の穏やかなものだ。でも過激派にとっては、正規分布などまったく役に立たない。だから物理学で金融を理解しようとしても無駄だ、とタレブは主張する。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P356

モデルを構築して改善するプロセスは、あらゆる科学や工学に共通するやり方だ。世界を理解するうえで、いまのところこれにまさる方法はない。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P358

リーのモデルは、一定の条件のもとではうまく動いていた。しかしどんな数理モデルであっても、その前提となる条件が崩れたら機能しなくなる。金融機関のリスクマネジメント担当者たちは、リ―のモデルがどんなときに失敗するかという点を、あまり考えていなかったようだ。とりあえずみんな儲かっていたから、用心するのを忘れていたのかもしれない。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P369

つねに前提を疑い、自分たちのモデルに小さな穴がないかどうかをチェックしつづけている。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P370

解説 経済の理論になぜ物理が活躍するのか?

物理学は事後の検証から原因を推定することによって変動の要因を洗い出そうとする(新たに登場した)手法と言えるかもしれない

ウォール街の物理学者(Kindle版)P376

株価が気ままに動くからといって、どのような値段になるのか全くわからないわけではなく、釣鐘型分布(平均値にビークがあり、そこから離れるに従い急速に減少して行くような分布のことで、人間の身長とか体重の分布が典型的である)の確率で表されるという主張である。このような単純な仮定から出発すれば、結果的に簡単に株価予想ができるのだ(ただし確率だけだが)。
要するに相場は常にその時点のプラス・マイナス全ての情報を含んでおり、実際の価値を反映した価格になっているから、価格の変動は偶然に起こっているとしてとりあえずはよいという仮説である。ともかくも偶然には規則性があることの発見であり、偶然を飼い馴らす重要な第一歩であったのだ。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P377

結果に対して原因はいくつも存在し、それぞれが対等に寄与して一対一にならない。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P380

端的に言えば、株価は「偶然」の作用の集積によって変動しているのだが、偶然の起こり方には法則性があり、それをいかに読み取るかに数学や物理理論が応用されてきたのである。

ウォール街の物理学者(Kindle版)P382

ウォール街の物理学者(Kindle版)

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次