まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本)
はじめに
私たちの生きている世界が、めったに起きないはずの出来事で説明できてしまうケースがどんどん増えている。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) Pii
すでに起きたことはいつだって実際ほどには偶然には思えないものだから(後知恵バイアスと呼ばれる)。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) Piii
懐疑的であり続ける―物事を疑い、自己批判し、自分の限界を認める―のは勇気のいることだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) Piv
確率とは、私たちの知識が不足していて、確実なことはわからないと認めることであり、自分の無知を相手にするためにつくられた方法なのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) Pv
実際に起きた結果とは違う結果が起きていたかもしれないことを考慮したり、世界はこうではなかったかもしれないと考えたりすることが確率論的な考え方の核心となる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) Pv
自然科学ならまだ確率がわかることも いくらかあるけれど、経済学のような社会「科学」の世界では、専門家がいくらはやしたてようが、ほとんどなにもわからない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) Pv
準備を怠らないからこそチャンスも生まれるのだ!
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) Pviii
そういうことをやっていないと成功できないけれど、それだけで成功できるわけじゃない。そういうことが成功の原因ではないからだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) Pviii
運を味方につけろ!
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) Pviii
私たちの脳みそは因果の方向をさかさまに捉えてしまうことがある。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) Pix
お金持ちはみんな粘り強くてよく働く人たちだからといって、粘り強くてよく働く人がみんなお金もちになるとはかぎらない
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) Px
理論の裏づけなしで統計を使うのは間違いだ。でも、その逆は間違いではない。つまり、統計の裏づけなしに理論を使うのは間違いではない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) Px
プロローグ
私たち人類の考えや行動にはもともと限界や欠陥がある、だからそのことを認め、そのことを前提として個人や集団の行動を考えるべきだと信じている。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P11
理性で感情を押さえ込むのではなく、感情をなだめすかしてなんとかするやり方だけだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P12
世の中には、簡単ではっきりした答えがあると考える人たちと、 単純化すれば必ずどこかに重大な歪みが出ると考える人たちがいる
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P12
第Ⅰ部 ソロンの戒め
つまり、どんなに成功する可能性が高くても、失敗したときに失うものが大きすぎれば可能性の高さなんて関係ない
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P17
第1章 そんなに金持ちなら頭が悪いのはどうしてだ?
どんな場合でも、トレーダーをまとめて押し流してしまう稀な事象、つまりパニックや急な暴落で吹き飛ぶ可能性を避け、逆にそんな事態が起きたときに儲けた いと考えている。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P24
あと数百万回キャリアをやり直しても、ネロが運でひどい目にあうケースはとても少ない。その一方で、そんな手堅いやり方をしているために、大変な幸運にみまわれることも、やはりとても少ないのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P36
仕事について検討するなら、その仕事で成功した人の例ではなく、その仕事を選んだ人の平均を考えなければいけない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P37
観察された結果と観察されないけれどあり得た結果の両方を考慮すべきだ
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P38
第2章 奇妙な会計方法
どんな分野(戦争、政治、製薬、投資など)でも、結果で成績を測ることはできない、あり得た他の可能性(つまり、歴史が違った道をたどっていた場合)のコストで測るべきだ
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P39
私たちには結果として得られた富は見えるけれど、富が得られる過程は決して見えない。おかげで私たちはリスクを忘れ、失敗例にはまったく注意を向けない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P44
ものすごく簡単なゲームのように思えて、いい加減にやってしまうのだ。
確率はあれほど巧みに計算 できる科学者たちでさえ、ここでは意味のあるオッズを計算できない。彼らの知識は現実の弾倉が見えているときにしか使えない。その現実の弾倉について、私たちは一般的になんにもわかっていない。
当然、物事を判断するときの私のやり方は自然と確率論的になる。つまり、可能性としてどんなことが起こりえるかという発想にもとづき、また、観測されたことに関してはある種の心構えを持つ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P45
人は何か抽象的なことに対して保険を掛けるのを嫌う。彼らが注意するのは、いつも、もっと生々しいリスクのほうなのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P57
つまり、リスクを避けようとするとき、合理的な考えは少ししか関係ないし、ほとんど関係ないと言っていい。合理的な考えが役割を果たすのは、ほとんど、自分の行動に何か理屈をつけて正当化するときのようだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P58
世界はどんどん複雑になり、一方私たちはどんどん単純化されたものにばかり接するようになる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P59
定義によって、私は流れに逆らった動きをする。だから私のスタイルや方法は当然のように人気がないし、簡単にわかってもらえることもない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P62
でも、私は板ばさみに苦しんでいる。
一方では、私だって他人と一緒に現実の世界で仕事をしている。そして現実の世界で生きているのは、 バブバブ言うだけで結局は何の意味もない、いようがいまいが本当にどうでもいいマスコミだけではない。
だから世間の皆さんがランダム性にだまされ続けてほしいと思う(私が彼ら相手に取引できるように)。
私にとっては他人がランダム性にだまされ続けてくれる必要がある。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P63
私にとって最大のリスクは成功することだ。私の場合、成功するということは、仕事が消えてなくなってしまうということだからである。われながら、まったくおかしな商売だ。
第3章 歴史を数学的に考える
投資家の財産が、たとえば一年後にいくらになっているかだけではなく、それまでの間にたどる肝をつぶすような道のりを知りたいのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P66
さて、サンブル経路はあらかじめ決まっている場合もあるし、ランダムに決まることもある。次に、その違いを考える。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P66
確率過程とは、時間とともに起きる事象がどう展開していくかを表す。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P67
ランダムなサンプル経路を何千でも何百万でも生成して、その特徴のうち大事な部分を見ることができる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P67
知識を集めるとき、集め方に偶然の要素があることを認め、紛れ込んだ偶然の要素を議論から取り除かなければ、集めた知識の質を判断することはできない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P70
結果同士の違いは、ランダム性にどれぐらい抵抗できるかを示している。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P71
私にとって歴史は、使いたいと思うレベルで役に立ってくれればそれでいい。つまり、過去の出来事に照らして考えたいときにちゃんと考えられて、他人の考えをうまく盗んで利用できて、人から学ふときに邪魔になる私の精神的な欠陥を正せるぐらいにわかっていればそれでいい。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P74
実際、私は歴史から二つの方法で学ぶ。一つは先人の書いたものを読んで過去から学ぶやり方、もう一つはモンテカルロのおもちゃで将来から学ぶやり方だ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P74
人は無意識のうちに学習し、意識できる部分では学習した内容を覚えていない場合があることが示された。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P75
過去を振り返ると、いつも過去は決まっている。観察できる過去は一つだけだからだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P78
私たちの頭は、ほとんどの事象を、起きる以前ではなく起きて以降に照らして解釈する。
間違いかどうかは事後に決まるのではない。事前に得られた情報に照らして決まるのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P79
市場でもよく言うように、間違ったトレーディングをしていればそのうちツケが回ってくる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P81
確率論の数学者たちはそれにすてきな名前をつけている。エルゴード性だ。おおざっぱに言って、エルゴ ード性とは(ある条件の下で)非常に長いサンプル経路が皆お互いに似た結果に行き着くことを指す。とてもとても長いサンプル経路の性質が、モンテカルロでもっと短いサンプル経路をつくって平均をとったときの性質に近くなる。
みんなそれぞれ長期的な性質に戻ってくるのだ。
マスコミでありながら有能な人間であるためには、物事を歴史家のような視点で見て、自分が提供する情報の価値を割り引いて考えなければいけない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P82
アイディアの場合は古いものこそ美しい。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P82
新しい考え方よりも蒸留された考えにこそ価値があるのだという直感に拍車がかかる。
あるアイディアがいろいろな時代を経て長い間生き残ったとしたら、そのアイディアは相対的により適応しているということだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P82
一方ノイズ、少なくともノイズの一部は、その間に取り除かれている。
私たちに見えて、 私たちが勘定に入れるのは勝ち残ったものだけだ。敗れ去ったものは取り除かれている
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P83
歳をとっているのは優れた遺伝子を持っている証拠 だからだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P88
神は将来を見、凡人は現在を見るが、賢者はもうすぐ起きることを見る
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P89
期間を短くとると、ポートフォリオのリターンではなくリスクを観察することになる。つまり、 見えるのはほとんどばらつきばかりだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P92
苦しみは喜びで相殺できない(一部の心理学者によると、 平均的な損失で人が感じる苦しみは、同じだけの利益で人が感じる喜びの二・五倍の衝撃力を持つ)。 情緒面では赤字が出るのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P93
私の唯一の強みは、私は自分の弱みを知っていることだ。つまり、ニュ ースを目の前に出されると感情を抑えきれないし、冷静な頭でパフォーマンスを見ることもできない。それならなんにも聞こえないほうかずっといい。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P94
第4章 たまたま、ナンセンス、理系のインテリ
命題は二つに分類できる。一つは「2+2=4」といったような演繹的な命題だ。つまり、 厳密に定義された公理系(この場合計算の決まりごと)から疑問の余地なく導くことができる命題である。もう一つは「スペインには雨が降る」とか「ニューヨーカーは一般的に粗雑だ」といったような帰納的な命題だ。つまり、(経験や統計など)なんらかの形で検証が可能な命題である。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P96
日々の生活の細かいところでは、私たちはべつに合理的であったり科学的であったりする必要はない。 そういうのは、生き延びられるかどうかがかかっているときだけでいい。でも、現代の日常では、そのまったく逆のほうへ誘われているような気がする。つまり、一方で私たちは宗教やごく個人的なことではものすごく合理的で科学的になり、他方では偶然に左右されるような物事になると非合理極まりない態度をとる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P103
第5章 不適者生存の法則 ー 進化は偶然にだまされるか?
「同業者に比べればまし」だからいいんだと感じていた。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P112
これは問題がシステマティックなときに見られ る症状だ。つまり、まったく同じやり方をしているトレーダーがたくさんいるということになる。他 のトレーダーも損をしているというのは罪を告白したのも同然だ。
トレーダーの脳みそは、ちょうど、 他の人たちがやっていないことをしようとするものだからである。
一番成功しているトレーダーとは、一番最近の市場のサイクルに、一番適応した人たちであることが多い。歯医者やピアニストの世界ではあまりそういうことは起きない。彼らの仕事はあまり偶然に左右されないからだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P113
経済指標にもとづいてトレーディングをやって、これまで成功できたのは単なる偶然かもしれないし、もっと悪くすると経済学的な分析そのものが 過去に起きたことに合うようにつくられてしまっているかもしれないとは、彼らは決して考えな い。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P120
その結果、過去の出来事を左右した偶然の要素が見えなくなってしまう。
筋の通った経済分析とは逆の方向へ市場が動 いた期間に自分の理論を実験してみてはいなかった。経済学はトレーダーの足元をすくうときと助けになるときがあるのだ。
自分の考えを批判的に検討することがない。「ストップロス」を置いてスタンスを変更するなんてことがないのに、それが表れている。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P121
自分の方法が間違っている可能性に備えて余裕を持 っておくぐらいはすべきだ。
ソロスはいろいろ欠点もある人だけれど、悪い結果が出ると決まって自分の分析の枠組みを検証するらしい。
稀な事象は突然起きる。私たちは物事がよりよいほうへ連続的に「収束」していくような世界で暮らしているわけではない。人生のいろいろなことも連続的に動き続けているわけではない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P125
非常に小さい粒子は、状態から状態へ(離散的に)ジャンプする。状態の間を滑らかに移動するのではない。
平均では、確かに動物は適応するのだけれど、それぞれの個体が全部適応するわけではない。動物がたまたま運のいいサンブル経路をたどって生存することがあるように、何かの分野で「最高のや り手」が、実は、特定のサンプル経路に過適応した種の一個体にすぎなかったりする。進化を起こすような稀な事象が起きなかったサンプル経路だ。そういう種の弱点は、稀な事象が起きないままの期 間が長ければ長いほど、稀な事象に弱くなることだ。期間を永遠まで延ばすと、エルゴード性が働い て稀な事象は必ず起きる。そしてその種は絶滅するのだ! 進化とは一つの、かつ、たった一つの時系列に適応することであって、あり得るすべての環境の平均に適応することではないのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P125
第6章 歪みと非対称
損失が起きる頻度や確率は、それ自体だけでは、もうぜんぜん関係ない。結果の大きさと合わせて考えないといけない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P129
大事なのは何かが起きる確率ではない。実際にそれか起きたときにとれだけ儲かるかを考えないといけない。どれぐらいの頻度で儲かるかは関係ない。どれだけ儲かるかが大事なのた。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P132
私がずっと市場でやってきた仕事は、「歪みに賭ける」と言うのが一番合っている。つまり、稀な車象て儲けるのだ。稀な事象はめったに起きないけれど、その分、実際に起きればとても儲かる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P134
オプションを買えば九○%の割合(つまり頻度)で損をするという統計は、残る一○%のときに平均でいくら儲かるかを考えないと、明らかに意味がない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P135
歪みに賭けて、稀な事象が起きたら儲かるようにしているのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P136
経済学以外の分野なら、ペイオフの違いがあまり重要ではないときに極端な値をサンプルから排除してしまっても問題は起きない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P136
休暇の計画を立てるときに平均気温を知りたいなら、極端な値を取 り除くのはいいやり方かもしれない。でも、天候の物理的性質を知りたいときはうまくいかない。とくに累積的な効果が問題のときはそうだ。そういった短期的な気温の急上昇はめったに起きないけれど、溶けた極地の氷は元に戻らず、効果は積み重なっていく。だから影響は非常に大きなものになるのだが、科学者たちは最初、それを見すごしていた。ファイナンスでもそうだけれど、重大な結果をもたらす事象は、めったに起きなくても無視してはいけないのである。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P137
確定的な世界なら 物体の位置の変化は時間に依存して決まる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P139
でも、私たちの住んでいる世界は、性質がよくわかっているかどうかがわからない。
歴史の教えるところでは、これまで起きたことのないことでも起きるときには起きるのだ。歴史を見れば、狭い意味での時系列データからわからないことがたくさんわかる。見るものが幅広ければ幅広いほど、いいことが学べる。言い換えると、なんとなく過去の事実を見るだけの安易な実証主義は避けるべきだと歴史が教えてくれるのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P140
稀な事象とは、過去のデータを狭く解釈してしまい、その結果、リスクを見誤ることだ、と私は考えている。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P141
そもそも稀な事象が存在するのは、 まさしく予測されていないからだ。通常、稀な事象はパニックで起きる。そしてパニック自体も投売りの結果起きるのだ(逃げ出そうとする投資家たちが、手当たり次第になんでもできるだけすばやく 売ろうといっせいに動く)。運用担当者やトレーダーが予測していたなら、彼らも彼らのお仲間も、そもそも投資しないだろうから、稀な事象も起きないのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P141
損失が出ると、ただ損失が出たということだけがまず認識され、それ以上の意義はしばらく経たないと認識されない。利益のほうも同じだ。市場参加者は損失の回数が少ないのを好み、利益の回数が多いのを好む。全体としてのパフォーマンスの最適化を考えるわけではない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P143
市場には稀な事象を逆手にとる種類のトレーダーがいる。そういう連中にとって、ボラティリテ はむしろいいニュースである。彼らはよく損を出すけれどその額は小さく、めったに儲けないけれど そのときが来れば大儲けする。私は彼らを危機の狩人と呼んでいる。自分もそんな連中の一人だ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P144
情報が多ければ多いほど、得られた結果は信頼できる。では、どれぐらい? 普通に使われている方法では、データが増えるに従って信頼水準が安定的かつ非線形に上昇していく。具体的には、サンプ ルの数が倍になれば私たちの知識はnの二乗根倍になる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P144
私たち人間は自分の知識にもとづいて行動する。ここでいう知識とは過去のデータだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P147
合理的なトレーダーが、月曜日に株式は上昇するというバター ンを発見したとする。すると、そんなパターンはすぐに誰もが気づく。それを利用して儲けてやろうと金曜日に買って月曜日に売る人たちの取引で、パターンはならされて消えてしまう。
第7章 帰納の問題
この分野ではランダムな要素が折り重なって大きな影響を及ぼすからだ。・ レーディングの世界ほど帰納の問題が重要な分野は他にない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P149
白い白鳥を何羽見ようと、すべての白鳥は白いと推論することはできない。一方、黒い白鳥を、羽でも見かければ、その推論を棄却するのに十分である。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P150
データを使えば命題を反証する けれど、命題を証明することはできない。歴史にもとづいて推論を棄却することはできるけれど、支持することはでき ない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P152
データは仮説を支持するよりも棄却するのに使うほうが安全だ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P153
現実はゲームと違って一貫した公平なルールも規制もない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P154
損をする確率は小さいが実現すれば大きな損が出る一方、儲かる確率は大きいが実現 しても利益は小さいとき、ゲームに勝つ確率を最大化しても、ゲームで得られるものの期待値は最大化されない。低い確率で大きな損失が発生し、高い確率で小さな利益が出る、
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P155
物事をゲームみたいに捉えて勝とうなんて考えてはいけない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P155
ランダム性を伴う環境で実験を一回やっただけではたいしたことはわからない。実験で 因果関係があることを示すためには、再現性が必要だ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P157
価格がひとたび均衡から離れると、そのことで価格はさらに均衡から離れ、フィードバックの循環が続いてさらに離れていく、そう考えている経済学者 はたくさんいる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P157
彼は偶然にどう立 ち向かえばいいか知っている。先入観にとらわれない批判的な頭を持ち、ほとんどなんのてらいもなく意見を変えられるのだ(それには副作用があって、彼は他の人をちり紙みたいに扱う)。彼はあち こちで自分はよく間違いを犯すと言って回っている。皆が自分を過大評価している中で彼だけは自分 のことをわかっている。だから彼の影響力はとても大きかった。ソロスはボパーを理解している。彼 が書いたもので彼を評価してはいけない。彼は生き方がボパー主義なのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P158
黒い白鳥がいるという命題を立てることは可能だ。理論を正しいと証明することはできない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P161
理論は一時的に容認されるだけだ。先ほどのカテゴリー二つのどちらにも当てはまらない理論は理 論ではない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P162
(同じように、どうなったら考えを改めるかをはっきりさせていないトレーダーは、私にとってはトレーダーではない)
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P162
何をするにしても、世界の見方に関するなんらかの理論にもとづいて賭けをしていることになる。でもそのとき、こんな条件を自分でつけるのだ、とんな 稀な事象が起きても、そのことでひとい目には合わない形にすること。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P164
反証主義と開かれた社会は、私がトレーダーとして毎日仕事でランダム性に立ち向かうときの厳密な方法と結びついている。ランダム性に立ち向かうとき、開 かれた心は不可欠だ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P164
具体的なことをたくさん集めて一般化する、それが帰納である。そうするととても便利だ。具体的なことの集まりに比べると、一般的なことは私た ちの記憶の容量をそれほど食わない。でも、そういう圧縮を行うと、ランダムな部分があまりわから なくなる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P166
統計学が何かの役に立つときは私も統計学を使 う。それが危険なときは使わない。積極的な賭けをするのには統計学と帰納法を使うけれど、リスク やエクスポージャーを管理するのには使わない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P167
彼らはなんらかの観察結果(それには過去の 歴史も含まれる)からつくったアイディアにもとづいて取引を行う。しかし、ボパー主義の科学者と 同じように、自分が間違っていた場合に払うことになる代償は、間違いなく限定されているようにす る(さらに確率は過去のデータにもとづいて決めない)。カルロスやジョンと違って、彼らは取引戰 略を実行する前に、どうなったら自分の仮説が間違っていたことになるかをはっきりさせている。
間違っていたことがわかったら取引を手仕舞うの だ。そういうやり方をストップロスという。あらかじめ決めた、ここまできたら脱出するという場所 であり、黒い白鳥に対する予防だ。これを実践している人はほとんど見ない。
第8章 あるいはとなりの億万長者でいっぱいの世界
確率の歪みを逆の方向に利用かもしれない。 もう何度も書いたように、もっと理性的になったり、誰かに侮辱されても冷静でいたりするのは生するのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P178
私たちは目の前にぶら下がった情報に飛びつくように、目に見えない情報は無視するように、躾けられているからだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P182
レシミュレーションを正しく行うにはどうすればいいだろう? たとえば五年前にいたマネジャー全 部を集めて、今日までシミュレーションしてみればいい。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P184
第9章 卵を焼くより売り買いするほうが簡単
ランダム性を相手にする人なら最低限あって当然と私が思う謙虚さと自分を疑う姿勢がなければとくにそうだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P188
モンテカルロ・エンジンを使って、純粋に偶然の状況をつくってやるのが私のやり方だ。普通に使うのとまったく逆のこと をやるのである。本当の人間を分析して特徴を割り出す代わりに、最初から特徴のわかった架空の人 間をつくる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P189
でも真実は、トレーダーが運を使い果たしてしまった、それだけなのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P191
母集団が長期的に損をすると期待されるようなマネジャーばかりでできていても、事態はあんまり変わらない。なぜだろう? そんな彼らで も、ボラティリティのせいで一部は儲ける人が出るからだ。この場合、悪い投資判断にとって変動性 はむしろいいことなのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P192
ある市場ですばらしいトラックレコードを持つマネジャーが何人出るかは、(歯学部に進む人の数みたいに)運用の仕事に就く人が最初何人いたかで大きく左右される。そんな人たちに利益を上げる能力がどれぐ らいあるかよりも、最初の人数のほうがずっと影響は大きい。また、ボラティリティも強く影響する。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P192
とても大きな外れ値が出ると、その後はもっと普通に近い値が出やすいという現象は歴史にも見られ、平均回帰で説明されてきた。乖離が大きければ大きいほど、その効果も重要だ という点に注意してほしい。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P193
たとえばパフォーマンスが一番いい集団の分布がそうだ。そういう分布の平均と、 っと、勝ち馬や負け犬からなる無条件分布の差が生存バイ アスだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P194
加えて、この例はエルゴード性も描いている。つまり、時間が経てば人を惑わすランダム性の効果 も消えていく。
生存パイアスは当初の母集団の大きさに左右されるのを思い出そう。ある人が過去に利益を出したという情報は、それ自体では意味もないし関係もない。知る必要があるのは、当初その人が属してい た母集団がどれだけの大きさだったかということだ。つまり、マネジャーがどれだけいて運用を始め、 どれだけが失敗して消えていったかがわからなければ、トラックレコードが有効かどうかはわからない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P195
統計学者がデータを見て、なんらかの関係を検証したいとする。たとえば何か、政治家の発言とい ったような事象の発生と、株式市場のボラティリティの相関を調べているとしよう。そういう場合な ら、得られた結果は本物である可能性が高い。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P198
実際、パターンがまったくないデータはむしろものすごく怪しい。 人為的な感じがする。ランダムな系列を一つつくれば、必ずなんらかのパターンが表れる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P209
ところが、本当にランダムなデータはランダムに見えないのだ!
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P210
これは、なんにもないと発見することと、発見がなんにもないことを混同している。なんにも起きなかったこと自体か大きな情報となることもあるのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P210
もっと情報がないなら判断は控えたほうがいいということだ。そのほうが 安全だ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P212
第10章 敗者総取りの法則
とても小さな量、ここでは砂を一粒追加しただけ で、私の初心者向けバベルの塔が崩れるという、不釣合いに大きな効果が表れた。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P214
「思いがけない受注や、弁護士とたまたま出会ったことや、経営者の気まぐれで・・・・・・(中略)・・・・・・初期の段階で の売れ行きや、時間とともにどの企業が他を圧倒するかが決まるのだ」
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P218
確率 の(よく知られた)数学が使えるためには独立性の仮定が必要なのである。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P219
ネットワークのつながりが増えれば増えるほど、誰かがアクセスする確率は高まり、いっそうつながりは増える。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P220
ブノワ・マンデルブロの業績が偉大なのは、 (性質が不安定なので)私たちにはよくわからない「強い」種類の不確実性が存在するのを指摘したところだ
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P221
毎日勉強していればそれに比例して何かが身についていると思う。進んだ気がしないとや る気が出ない。でも、現実は厳しく、線形で正の進歩なんてめったにない。一年勉強してもなんにも 身につかないけれど、結果が出ないことにうんざりして止めたりしなければ、ある日突然何かが訪れるのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P221
私の商売で言えば、価格の安い証券を持っていればいい ことがあるかもしれないが、なんらかの臨界点に達するまで、いいことは起きないかもしれない。ほ とんどの人は、そうなる前にあきらめてしまう。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P222
なんにでも成功の後ろには非線形の効果があることに気づいた。いいねと 言ってくれる程度の人がたくさんいるよりも、熱烈なファンが一握りいるほうがうまくいく。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P223
第11章 偶然と脳
私たちが一度に思い浮かべることができるのは状態一つであり、一つだけ、○ドルか二〇〇〇ドルかのどちら かだ。そんな武器しか持っていないので、私たちは非合理的に賭けをする。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P225
私たちは完璧には合理的で なく、日常的には近似を行っている、問題がそれほど犬きくない場合にはとくにそうだ、という主張 だ。一方、人間は不完全なのではなく、根本的に欠陥を抱えているという主張は認めようとしなかっ た。しかし、実際に人間とはそうしたものだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P233
人間の反応は、そのときたまたま開いたペー ジに載っているルールで決まるのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P233
選択肢の与えられ方で好みが変わるのだ。そんな歪みが起きるのは、私たちには知ったことを全部覚えておいて利用 することができないからだ。ヒューリスティックの重要な特徴は筋が通らない点なのである。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P234
物事を一般的な文脈で考えるとき、そのときどき に合わせて局所的に必要な知識の塊を断片的に集めてくるのだ。その結果、人は気まぐれに参照点を 決めて、そこからの差でしかものを見ない。絶対水準ではなく、決まった局所的な観点からしか物事を判断できないのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P235
実は、現実の日 常では変化分で考える状況しか起きない。利益の喜びよりも損の苦しみのほうが大きいという事実は、 累積のパフォーマンス、つまり累積資産額よりも直近の変化のほうが強い影響を及ぼすことを示して いる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P237
ヒューリスティックとバイアスの研究者たちは、 システムーが経験に影響され、システム2の要素を取り込むことがあると信じていると聞いて、自分 の考えは正しいのだと思った。たとえば、チェスを学ぶときに使うのはシステム2だ。でも、しばら くすると直観が働き出し、チェス盤を見ただけで相手が相対的にどれぐらい強いかわかるようになる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P241
私たちはまず(大脳辺縁系で)情緒を感じ、それから(新皮質で) 理屈を考えているということだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P248
人の考えの歪みを利用するトレーダーは楽しい仕事だけれど、そういう社会で自分が暮らしていると思うと怖くなる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P251
『私の知るかぎり、権利行使日が来ればほとんどの場合一ドル損をする一方、ときどき一〇ドル儲かる という取引を受け入れる人はほとんどいない。フェアなゲーム(つまり、一〇ドル儲かる確率が九, 一%ほどある場合)であってもそうだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P255
私たちは 情緒で考えるのであり、それは変えようがない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P256
ランダムな変数の最大値の分布に 成り立つ確率の法則により、平均値の最大値は必ず最大値の平均値より変動性が小さいのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P259
生まれたときの無条件平均余命はたしかに七三年かもしれない。でも歳を重ねて死なずにいると、年とともに平均余命は延びていく。それはなぜか? 平均とは期待値ということだ。死んだ他の人たちは統計データか ら外れていく。だから、七三歳で健康なら、たとえばもうあと九年生きると期待できる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P259
コツは、価格の変化率が大きいときにだけ注意することだ。何かの価格か普通の日よりも大きく変 化しないかぎり。それはノイスたと考える。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P263
「私が市場で(あるいは他のランダムな変数を相手に)やることは、市場やランダムな変数がどうなると予測しているかよりも、そういう信頼水準、つまり考えられる予測誤差の大きさのほうに、ずっ と大きく左右されるのがわかってもらえると思う。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P265
私は自分がそういう点でとてもとても弱いことを知っている。私 の人間らしい部分が私を失敗させようとする。私はいつも用心していないといけない。私は生まれつ き、たまたまなことにすぐその気になってしまう。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P266
第12章 ギャンブラーのゲンかつぎと箱の中のハト
私たちは物事がお互いに独立に起きるとは考えない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P279
安易に因果関係を思い浮かべるというバイアスが私たちに はある。
ボバーだろうと誰だろうと、私たちは物事 を真面目に受け取りすぎるのである。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P279
私の心と頭は一致しないから、トレーディングをするときは非合理的な判断をしないよう、本気で 取り組まないといけない。つまり、損があらかじめ決めておいた限度に達しないかぎり、自分でパフオーマンスが見られないようにしておくのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P281
第13章 カルネアデス、ローマへきたる
懐疑主義の核心は、確実だと認 められるものは存在せず、ただ、さまざまな確率を持った結論があり、それらが行動の指針となる点にある。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P285
「私が生まれてこの方出会った中で最高のトレーダーであるナイジェル・バベッジは、自分の過去の信念に対してまったく経路依存性がない。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P288
われわれは、自分自身と矛盾する権利を要求する!
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P287
彼らは過去の行動からまったく自由である。毎日がまったく新しい状態で 始まるのだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P289
自分たちはバカの集まりでなんにもわかってなくて間違いばかりしていて、ただ、それが自分でわかっているというめったにない強みがあるのだとわかってもらうのがいいということだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P294
第14章 バッカスがアントニウスを見捨てる
尊厳 ある態度をとれば、負けても勝っても英雄の気分になれる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P301
あとがき
シャワーを浴びながら振り返る
シャワーを浴びながら振り返る
能力があることをはっきりさせるには繰り返せるかどうかが鍵になる。第8章でエルゴード性と呼 んだものがその理由だ。長期的な性質が存在するか、存在するならばそれを特定できるかということ である。この次ラスヴェガスへ行ったときに、ルーレットで一〇〇万ドルを一回の勝負に賭けても、 一回の結果ではカジノが有利なのか、あなたが神様にとくに愛されているのかはわからない。お金を ばらばらにして、一ドルずつ一〇〇万回賭ければ、持って帰る額はカジノが有利な仕組みになっていることを示しているだろう。これは標本抽出論の核心で、伝統的には大数の法則と呼ばれている。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P306
幸せな人たちは充足化するタイプの人たちであることが多い。自分は人生で何がしたいかを知っていて、満足したらそこで立ち止まることのできる人たちだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P310
書いていいのは長さが予測できないときだけだ。終わりが見えたりアウトラ インの気配がしたりしたらもうだめだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P313
予測不能性は強力な抑止力なのである。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P314
他人にしてほしくないと思うことを、他人にもしてはいけない、残りの部分は単なる注釈にしかすぎない
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P315
私たちは、目に見えるもの や組み込まれたもの、個人的なもの、説明できるもの、そして手にとってさわれるものが好きだ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P315
訳者あとがき
ローカルズは、注文のフローを読み、そのときどきで一番弱い参加者を、短期的に価格を吊 り上げたり、引きずり落としたりして叩く。たとえばストップロスの水準が近い参加者がいるのを察知すると、ストップロスの価格をつけに行く。そのうえで、ストップロスの取引を利用して利ざやを 稼ぐ。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P323
「制度や規制をつくれば、規制を受ける 側はその規制を織り込んだうえで行動する」
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P325
付注
ケインズの美人投票とは、他の人が何を選 ぶかを考えて自分の選ぶものを決める状況であり、正のフィードバック 環が起きる。
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか(単行本) P366